「無添加」表示の規制厳格化。消費者庁の「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を解説

 
 
 

(写真:FOODS CHANNEL)

 

消費者庁は、令和4年3月30日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定した。これにより商品パッケージなどに記載されている「無添加」「○○不使用」という添加物表示に規制が入るようになった。

各食品メーカーは、これまで記載していた無添加表示などを同ガイドラインに沿ったものに変更しなければならない。

今回は同ガイドラインの概要や規制事項、事業者の対応策について解説していく。

なぜ「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が策定されたのか

消費者庁が「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定した背景には、消費者の誤解を招くような商品表示が理由の1つとして挙げられる。例えば、食品の加工時に添加物を使わない「無添加食品」だったとしても、原材料に添加物が含まれている曖昧なケースなどがあった。

食品表示法では、保存料や着色料、甘味料や酸化防止剤などの食品に使用されたすべての添加物を商品パッケージに明記しなければならない。一方で、添加物の不使用に関しては特に規定がなく、提供する食品メーカーなどに判断が委ねられていた。

しかし無添加や不使用といった表示を必要以上に強調することは、その裏返しとして「添加物の入った食品は危険」という認識が消費者に広まる懸念がある。

こうした消費者にとって分かりづらく混乱を招くような食品表示を改善するために、消費者庁は2021年3月から8回の検討会を開催し、今回のガイドライン策定に至った。

移行には2年間の猶予がある

今回のガイドライン策定に伴い、多くの食品関連事業者で商品表示の見直しが実施されることだろう。速やかに表示の確認を行うべきではあるが、包装資材の切替えなどには一定の期間が必要になるのも事実だ。

そこで2024(令和6)年3月末までの約2年の移行期間が設けられた。期間内に製造販売された食品であれば、見直し前の表示内容でも流通が認められている。

なお、このガイドラインでは、約2年間の経過措置期間終了後、「何を添加していないのか不明確な表示」「無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける表示」「無添加や不使用の文字などが過度に強調されている表示」を対象に、罰金などの罰則が科される可能性もある。

速やかな移行が望まれるため、食品メーカーはできる限り早めに表示内容の変更や差し替えなどを行わなければならない。

ガイドラインで規定された食品添加物の不使用表示に関する10類型

「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」は、様々な消費者や事業者へヒアリングを実施し、食品添加物の実態を把握した上で策定された。その中でも禁止事項に該当する恐れがある不使用表示を10の項目に分けている。

類型1【単なる「無添加」の表示】

何の成分が無添加、不使用なのか分からない場合の表示

類型2【食品表示基準に規定されていない用語を表示】

「人工甘味料不使用」のように人口や天然、合成や化学といった適切でない用語を用いた無添加、不使用表示

類型3【食品添加物の使用が認められていない食品への表示】

もともと清涼飲料水には使用できない「ソルビン酸」の不使用表示など

類型4【同一や類似の特性を持つ食品添加物を使用した際の表示】

日持ち向上を目的として、保存料以外の添加物を使用した食品に「保存料不使用」を表示するなど

類型5【同一や類似の特性を持つ原材料を使用した際の表示】

アミノ酸が含まれる原材料を使用した場合に、添加物として調味料不使用を表示するなど

類型6【健康や安全と関連付ける表示】

「健康に良い」や「安全である」ことなどを理由として無添加や不使用表示している場合

類型7【健康や安全以外の事項と関連付ける表示】

美味しさの理由として無添加や不使用表示、商品の開封後に言及せず、「保存料不使用のため、お早めにお召し上がりください」と表示するなど

類型8【食品添加物の使用が予期されていない食品への表示】

一般的に添加物が不使用な商品にも関わらず、「無添加」「不使用」を表示している、ミネラルウォーターには一般的に含まれない「保存料」や「着色料」の不使用表示など

類型9【加工助剤やキャリーオーバーとして使用されている食品の表示】

原材料の一部に添加物が使用されたり、原材料の製造工程で添加物の不使用が確認できなかったりする食品に「無添加」「不使用」の表示

類型10【過度に強調された表示】

商品パッケージの多くの場所に「無添加」「不使用」を表示、また目立つデザインやカラーリングで表示を行うなど

「無添加」表示不可による商品パッケージの煩雑化が課題

「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」は、食の安全性の確保や不適切な食品表示を減らすためのものである。しかし今回のガイドラインで危惧される点としては、企業が販売する食品に対して、無添加表示が煩雑になる点が挙げられる。

ガイドラインで示された不使用表示に関する10の類型では、単なる「無添加」の表示ができない。もし無添加表示を行うのであれば、「○○の不使用による無添加」などの具体的な成分の記載も必要となる。この変更点により、様々な不使用表示をしなければならず、パッケージの差し替えや製造コスト、情報管理の作業が増大するという懸念点がある。

食品安全の現状を理解し、正しい情報発信で消費者の選択を促す

そもそも日本で食品に含まれる添加物は、きちんと安全性の評価を受けたものが使用されていることを知らない消費者が多い。例えば消費者庁の資料では、60%以上の消費者がその事実を理解していないという実態がある。また、商品パッケージに多くの添加物の不使用表示があったとしても、それが安全な食品かをぱっと見て判断することは難しいだろう。

参考:消費者庁食品添加物の不使用表示に関する議論の振り返り

上記資料で記載された意見なども、対応を検討する際の参考にしてほしい。

各食品メーカーは、様々な媒体で食品の安全性についての知識を消費者に伝えることが重要だ。特に「消費者が誤認するような無添加・不使用表示をしない」「正確な添加物表示で消費者の選択肢を広げる」ことを意識しておきたい。

例えば、Webや紙媒体の広告はガイドラインの規制対象から外れるが、商品パッケージの表示と広告の記載内容が異なると消費者は混乱してしまう。そのため、「不使用表示の記載統一」や「ガイドライン策定による表示内容の変更点」などを商品パッケージ等に明記することが望ましい。

また不使用表示の項目が多くて商品パッケージに「無添加」と表示するのが難しい場合でも、QRコードなどから詳しい成分表示を閲覧できるようにすることで、消費者が知りたい情報を的確に発信することが可能だ。

参考:消費者庁食品表示に関するウェブサイト上での情報提供事例

消費者がより正しく商品を選択できるよう、各食品メーカーは今回のガイドラインに沿った安全な食品提供に努めよう。

ソース/ Foods Channel

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