抹茶を飲むと3つのカラダにいいこと 「抹茶と健康研究会」が新たな知見
抹茶を摂取すると、筋トレによる筋力・筋量増大を促進し、高齢女性の認知機能維持に有効で、さらに血管新生促進作用と脳血管老化防止に効果をあげる可能性がある――。
ネスレ日本と京都府は5月28日、「抹茶と健康研究会 第二回公開セミナー」をオンライン開催し、コロナ禍で公開セミナーでの発表を見送られていた18年度・19年度助成研究報告の中から、抹茶と健康に関する3つの新知見を発表した。
京都府立大学大学院の青井渉准教授は、健康には有酸素運動に加えてレジスタンス運動(筋トレ)が重要であるとし「筋トレ効果を高めるために、たんぱく質を中心とした主要栄養素については多くの研究がなされているが、われわれは運動すると酸化ストレスが高まることも考え、抗酸化作用を持った微量栄養素に着目して研究している」と語る。
微量栄養素の中でも抗酸化作用を多く含む茶成分にフォーカスし、筋トレ習慣のない健康な男子大学生19人を対象に試験したところ「筋トレで筋力・筋量が増大するが、抹茶を摂取することでさらに促進される。疲労を軽減して腸内細菌を改善する効果も期待でき、抹茶の摂取はスポーツ・健康運動領域に有用性が高いと考えている」。
試験では、被験者を抹茶(1杯抹茶1.5g配合)群とプラセボ飲料(デキストリン・植物油・香料・カフェイン・クチナシ色素入りの緑茶に模した飲料)群に分けて、週2回の筋トレを実施し、その間、毎日2杯を12週間摂取してもらったところ、抹茶群のみで最大筋力の上昇と骨格筋量の増大が確認された。
また、唾液中で見られるストレス指標が抹茶群で低値であったことから、抹茶の日常的な摂取が筋トレ時の疲労を緩和し、運動による骨格筋適応を促す可能性も示された。
その有効成分については「茶カテキンやルテインに加えてテアニンによるリラックス効果、さらに食物繊維、ビタミンKが、腸内細菌の改善に働きポジティブな目に見える効果ができたと考えている」。
高齢者の認知機能向上については、健康な在宅高齢者を対象にした12週間の試験の結果、女性において抹茶摂取群がプラセボ飲料(茶飲料と同型形状・同風味)摂取群に比べ有意に改善することが示された。
東京大学大学院の久恒辰博准教授は、そのメカニズムについて、これまで報告のある茶カテキンに加えて抹茶に多く含まれるビタミンKが関連していることを指摘。その上で「1日当たり3gの抹茶を3か月摂取することは、健康な高齢者、特に女性において認知機能低下を改善することが認められた。特に日頃ビタミンKの摂取が少ない方は抹茶から補うことを続けるとより効果が持続できる」と説明する。
神戸学院大学大学院の水谷健一特命教授は、これまでの研究で神経と血管の連携で脳が正常にできあがっていることと、脳の毛細血管が加齢にともない減少することを明らかにしてきた。
今回、マウスの脳の毛細血管を明瞭に観察できる実験機をつくり、抹茶を含む餌を毎日与えたマウスと抹茶を含まない餌を与えたマウスを30週間観察したところ「抹茶の継続投与は、老化に伴う大脳皮質の第一層における血管密度の減少を抑制した。中でも抹茶に豊富に含まれるビタミンKやルテインが血管新生促進作用を示すことも明らかになった」。
今後はこの実験を深化。「血管の細胞は非常に多様。今後、血管の質に対して予防効果がどのように発揮されるのかを突き止めるべく研究を発展させていきたい」と意欲をのぞかせる。
抹茶の原料となる碾(てん)茶は、摘み取り前に日光を遮ることで旨み成分であるテアニンを多く含んでいるのが特徴。また、抹茶は碾茶を石臼で挽いて、まるごと食すものとなることから、お湯に溶けにくい栄養素や健康成分も摂取することができる。
総じて抹茶には、茶カテキン(ポリフェノール)やテアニン(アミノ酸)ほか、カフェイン(アミノ酸)、ルテイン(カロテノイド)、ビタミンK(脂溶性ビタミン)の健康成分が豊富に含まれている。
この中で抹茶ならではの成分について、基調講演した農業・食品産業技術総合研究機構の山本(前田)万里氏は「特にルテインとビタミンKは煎茶にはない成分で、日本人女性の1日平均ルテイン摂取量は1日1杯の抹茶で倍増する。生活の中に抹茶をとり入れてもらうと健康にいい」と述べ、抹茶飲用による肌保湿効果・腸内フローラ改善効果・社会心理的ストレスへの耐性を示唆する過去の助成研究内容を紹介した。
「抹茶と健康研究会」の委員には同氏のほか、お茶の水女子大学の近藤和雄名誉教授、京都先端科学大学の藤井孝夫教授、京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所所長、ネスレ日本の福島洋一ウエルネスコミュニケーション室室長が務めている。
ソース : 食品新聞