代替肉が注目される理由とは?本物に近い美味しさを追求する最新技術を紹介

 
 
 

(写真:Adobe Stock)

 

「代替肉」とは大豆のような植物由来の食材を使って、肉の味を再現する加工食品です。代替肉は、「新しい食肉の形」として注目が高まりつつあります。

より本物の食肉に近づけるために、世界中で様々な研究が行われています。この記事では代替肉が注目を集めている理由と、美味しさを追求するための最新技術をご紹介します。

(写真:Adobe Stock)

なぜ代替肉が注目されているのか

近年、大豆を原料とする代替肉を目にする機会が増えてきました。スーパーでは大豆ミートのミンチや、からあげなどの代替肉が販売されています。また、ハンバーガーチェーン店では、大豆ミートを使用したハンバーガーがメニュー展開されています。代替肉が注目される理由は以下の通りです。

  • 肥満対策やがん予防などの健康意識の高まり

  • 人口増加による食糧不足が危惧されている |(タンパク質危機)

  • 畜産による環境負荷を減らすため

肥満対策やがん予防といった健康意識の高まり

代替肉はヴィーガンのような菜食主義者だけでなく、最近では一般消費者にも認知されつつある傾向です。。例えば、大豆ミートは動物性の肉とほぼ同じ量のタンパク質を摂取できるだけでなく、カロリーの低い点が特徴です。「ダイエット中だけど美味しいものが食べたい」と思う消費者から、代替肉は注目されています。

また、赤肉と加工肉の摂取による発がん性に関する調査(世界保健機関、2015年)によれば、ハムやソーセージのような加工肉や赤肉は「発がん性がある」と指摘されています。加工肉について「1日当たり50gの加工肉を毎日継続して食べることで、大腸がんのリスクが18%増加する」という研究結果を発表。

また、牛肉や豚肉のような赤肉は「1日当たり100gの赤肉を毎日継続して食べることで、大腸がんのリスクが17%増加する」とされています。

このような健康リスクを心配して、代替肉を選ぶ消費者もいるでしょう。

*参考:農林水産省

人口増加による食糧不足が危惧されている ( タンパク質危機)

世界の人口予測に関する調査 (国際連合、2019年)では、世界人口は2050年には97億人になると推測。今後30年で20億人の増加が見込まれています。

人口に対して食肉が不足し、その需要と供給のバランスが崩壊する可能性があり、これを「タンパク質危機 (global protein crisis)」と呼んでいます。

単純に肉の生産を増加すればよいという話ではなく、1kgの牛肉を生産するために必要な穀物量は、とうもろこし換算で11kgとされています。

食肉の生産を増やすためには、より多くの穀物が必要になり、その結果、人間が食べる穀物も不足してしまうのです。そのため、代替肉の利用に注目が集まっています。

*参考:農林水産省

畜産による環境負荷を減らすため

家畜が発するゲップにはメタンガスが含まれています。このメタンガスは、二酸化炭素の約25倍もの温室効果があるといわれています。

1頭の牛から1日あたり約200~600Lのメタンが放出されています。これを二酸化炭素量に換算すると年間約20億トンのCO2に相当し、温室効果ガス全体の約4%を占め、地球温暖化の原因のひとつとなっています。

*参考:農研機構

(写真:Adobe Stock)


代替肉市場の現状と課題

健康や環境問題に対する意識の高まりから、代替肉市場は年々拡大しています。一方で、代替肉をより普及させるためには、どのような課題があるのでしょうか。


2019年度の大豆ミートの市場規模は15億円

大豆ミートの市場規模に関する調査 (日本能率協会総合研究所、2021年)によれば、2019年の大豆ミートの市場規模は約15億円。

2022年には25億円まで拡大し、2025年には40億円まで増加すると推測されています。これは一般消費者の食生活へのヘルシー志向が進み、大豆ミートのような代替肉の需要が増えたのではないかと考えられます。

※出典:大豆ミート市場規模 (株式会社日本能率協会総合研究所)

代替肉の今後の課題

代替肉の認知度は上昇傾向にありますが、食べた経験を持つ人はまだ少ないのが現状です。代替肉・代替タンパク質に関する調査 (株式会社クロス・マーケティング、2021年)によれば、代替肉を食べた経験のある方は全体の23.9%でした。

「代替肉を積極的に食べたくない」と思う理由として、「わざわざ食べる必要が無いから」「美味しくない もしくは美味しく無さそうだから」が挙げられます。

代替肉の美味しさの決め手は、肉本来の「味」や「食感」を再現できるかどうかにあります。より本物の肉に近づけることができれば、食べてみたいと思う方は増えていくでしょう。

※出典:代替肉・代替タンパク質に関する調査 (株式会社クロス・マーケティング)

(写真:Adobe Stock)

代替肉をより美味しくする最新技術を紹介

代替肉をより美味しく食べてもらうために、さまざまな研究が行われています。本物の食肉に近づけようとしている最新技術をご紹介します。

植物由来肉を美味しくする人工脂肪の開発

食肉の美味しさを感じる要素の一つは「脂」です。食肉の脂が口の中に入ると、しっとりとした食感を与え、一緒に食べた物の味を増強させる効果があります。

現在の大豆ミートなどの植物代替肉の脂肪は主にココナッツオイルが使用されていますが、ココナッツオイルは熱に弱く、すぐに溶け出してしまい、ジューシーさが損なわれてしまいます。また、食肉の脂のような香りではないため、添加物でそれを補っています。

代替肉の脂を本物に近づけるために、Yali Bioはカリフォルニアを拠点に、植物代替肉や乳製品向けに人工脂肪の開発を行っています。

Yali Bioでは、「精密発酵」とよばれる技術を用いて脂肪の生産。精密発酵とは、微生物を利用した特定の動物性タンパク質を量産する技術です。この技術により生成された脂肪は、ココナッツオイルよりも動物性脂肪の食感や味を楽しむことができます。

*参考:植物由来肉を人工脂肪でおいしく

3Dプリンタを使用した培養肉の制作

大阪大学や凸版印刷などの共同研究グループは、和牛肉の構造に近い「培養肉」を3Dプリンターを用いて開発。

「培養肉」とは、動物から取り出したわずかな細胞を培養することで、生成される肉のことです。現在の培養肉は牛ミンチのような肉が多く、ステーキ肉のような噛み応えのある培養肉は市場には少ないのが現状です。これは、筋肉、脂肪、血管の食感を再現することが難しいとされているためです。

大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授らの共同研究グループは、3Dプリンターを用いて細い筋繊維ファイバー、脂肪ファイバー、血管ファイバーを作成しました。これらのファイバーを束ねることで、霜降り肉を培養肉として再現することに成功しました。

*参考:3Dプリンターで「霜降り培養肉」を作製

キノコ由来の代替肉

シドニーを拠点とするスタートアップ企業・Fable Foodでは、キノコ由来の代替肉を製造しています。

製品の原料には主にシイタケを使用。キノコの菌の中に含まれる「菌糸体」という長い繊維を利用することで、肉のような食感を再現しています。

さらに、シイタケを使用することで、十分な噛み応えを得られるだけでなく、自然の旨味を味わえる点もメリットです。

現在、商品のラインナップは牛肉のみですが、今後はキノコを原料とした豚肉、鶏肉、ラム肉の代替品を開発していくとCEOのフォックス氏は述べています。

*参考:キノコ由来代替肉の豪スタートアップ「Fable Food」

(写真:Adobe Stock)

代替肉を食べることで身体も地球もヘルシーに

環境問題や食糧問題の解決に向けて、代替肉の市場は広がりを見せています。いま市場に流通している代替肉でも、美味しさを十分に感じられるものになっています。

しかし、代替肉の進化はより「本物の肉の味や食感」を再現するために、あらゆる研究が日々行われています。

多くの消費者が代替肉を受け入れられるようになれば、ヘルシーな生活を送れるだけでなく、環境に優しい世の中に変わっていくでしょう。



ソース/ Yogajournal

文/ 立山貴美恵





Previous
Previous

In de toekomst drinken we kombucha in plaats van wijn

Next
Next

Les 5 principaux avantages des tomates pour la santé