「ごみ」からできたメニューを提供する、LAのレストラン
米国サンフランシスコにオープンしたレストラン「Shuggie’s Trash Pie」。ここでは、提供されているメニューのすべてが、「廃棄食材」からつくられている。
そこにいるだけで気持ちが明るくなるような、緑と黄を基調にした、カラフルな店内。「food waste paradise(食品廃棄天国)」という標語を掲げるこのお店では、季節やその日手に入る食材によって変わるピザやサイドメニュー、ナチュラルワインが提供されている。料理には、規格外野菜から、流通にのらなかった魚、肉の切れ端まで、そのままでは「廃棄される運命の食材」が使用されているという。
レストランのオーナーは、KaylaとDavid。「不細工な」野菜をピクルスに加工し、販売する会社「Ugly Pickle Co.」を立ち上げた二人は、今回新たにShuggie’s Trash Pieを立ち上げた。ピクルスづくりの過程でさまざまな農家の人たちとかかわり、捨てられる大量の野菜を目にするなかで、レストランを立ち上げるに至ったという。
背景には、米国のおよそ4,000万人が十分な食事を手に入れられない一方で、全体の40%の食べ物が不揃いな見た目や過剰生産などを理由に廃棄されているなど、世界的に問題視される「食の不均衡」の課題がある。食品の廃棄は、気候変動にも大きく影響を与えており、気候変動に関する情報や視点を発信する団体「Project Drawdown」によると、食品廃棄による温室効果ガス排出は、全体の8%を占めているという(※1)。
オランダの「Instock」やヘルシンキの「Nolla」、ロンドンの「Silo」のように、廃棄食材を使用したレストランも最近増えてきている。また日本でも、廃棄食材を利用した「もったいない食堂®︎」や「ハイキ」などの飲食店、KuradashiやTABETEなどのサービスも数多く存在する。
「廃棄」という言葉からは、少しネガティブな印象を受ける人もいるかもしれないが、明るくポップな雰囲気で食品廃棄のメッセージを伝えるShuggie’s Trash Pieの取り組みからは、深刻さよりも「楽しさ」が伝わってくる。
今や、「食品廃棄や食品ロスを削減しよう。」という言葉は、多くの人にとって耳馴染みがあるものになったが、それでもつい、食品を無駄にしてしまう人も少なくないだろう。少し傷んでしまった野菜をどう調理していいかわからない……そんなとき、このレストランにあるメニューの一つ「Kakiage(かき揚げ)」のように、揚げてみたり、野菜をまとめて炒めてみたりして美味しく食べてみてはどうだろう。
食べ物一つ一つは、私たちと同じ生きた「命」。その命を無駄にしないクリエイティブな方法を、ぜひ考えてみたい。
※1 Project Drowdown- Reduced Food Waste
ソース/ ideasforgood
文/ 伊藤智子